昼間の居場所~エルム昼間部

1990年に不登校の子どもたちの昼間の居場所として「エルム昼間部(ちゅうかんぶ)」を設けました。毎年5-6名、多いときには10名を超える小中高生が在籍しています。

大事にしていることは、なによりも安心して元気で居られること、そして、安心できる仲間とのコミュニケーションです。あたたかい雰囲気の中で、昼食作り、お出かけ、おしゃべり、遊び、ミーティングなどの活動を通して、たくさんのコミュニケーションが生まれます。

そして、もうひとつは学ぶ機会を保障することです。教科学習を通じて「知る」を積み重ねることで、正解のない未知の問いに対して「考える」力を養うことにつながると確信しています。

エルム昼間部の曜日・時間

曜日 時間 活動例
火曜日 10:30~14:00 お出かけ
木曜日 10:30~14:00 昼食作り、自主学習、ミーティング

子どもたちのために

1.学びの機会の保障

昼間部の自主学習の時間以外にも、さまざまな学びの機会をつくっています。不登校の子どもたちにも、エルムアカデミーの教育の原点―「学ぶことは喜びである」「わかった・できたは喜びである」を大切にし、すべての基礎学力となる小中学校の教科学習をいつでも学び直しでき、自信を取り戻していけるようにしています。

2.マンツーマンによる個別学習支援

その子の到達や発達特性に応じて支援計画を立てます。「わかった」「できた」を積み重ね、わかる喜びや学ぶ面白さが実感できるよう、興味関心なども考慮してその子に合ったオーダーメイドの個別授業をおこなっています。

3.AIを用いた学習システムの採用

「atama+」は最新AIがその子の理解度や学習傾向を分析し、その子の到達や学習傾向に合わせ、過去の学習範囲まで戻って学習できる、その子専用のカリキュラムを作成します。このAI学習システムを活用して、教科学習の学習支援をおこなっています。

保護者のために

1.保護者がひとりで抱えないための丁寧な教育相談

無料の教育相談を何度でもおこないます。不登校のお子さんを抱える保護者のみなさんには、先が見通せない焦りや不安をひとりで抱えている方も多いと思います。負担が少しでも軽くなるよう、経験豊富なスタッフや専門性をもったスタッフがお話をゆっくりお聞きして、解決の糸口や具体的な一歩を一緒に考えていきます。

2.関係機関との連携

さまざまな事情に応えていくために、小中高校の先生、養護教諭・スクールカウンセラー、教育委員会、教育センター、子ども家庭支援センター、児童相談所、医療機関、子ども若者応援フリースペースなどと連携をしてきました。大田区・品川区・目黒区の小中学校で、エルムアカデミー昼間部への参加が在籍校の出席として認定されています。学校との連携のなかで復学した例も多くあります。

3.進路の向き合い方

昼間部に通ってくる中学生の大多数は、「進路」を考え進めるなかで、学校復帰を考えて高校進学を希望します。現在、不登校の中学生が進学できる高校は、都立私立問わず多様なタイプが数多くあります。一人ひとりの願いや状況に寄り添いながら、子どもと保護者が一緒に進路を考えていける機会をつくり、それぞれの思いを応援していきます。教科学習の学び直しだけでなく、都立チャレンジスクールなど特別な受験対策が必要な場合も、一人ひとりに合った対応を丁寧におこないます。

保護者のことば

「エルムの昼間部ってどんなところ?」

息子はこの春、中学校を卒業しました。中学入学後、だんだんと登校できなくなっていった息子は、中学2年の2学期から約1年半の間、週2日の日中は、エルムの昼間部に通って過ごしました。

息子の中学校生活を振り返ると、ここまで山あり谷あり、本当にいろんなことがありました。エルムの昼間部は、息子がその一つ一つを乗り越えていくためのエネルギーを蓄える……そんな場所だったように思います。

エルムの昼間部は、決まったカリキュラムはありません。昼食作りや外出企画はありますが、基本的にはフリースタイル。だから息子は昼間部に行っても、「〇〇しなければいけない」というプレッシャーは感じなかったのではないかと思います。中学校生活では、自分なりに頑張って頑張って……、学校という環境に疲れて果ててしまった息子にとって、昼間部は気負うことなくリラックスでき、安心して過ごせる空間だったのでしょう。

そして息子にとって何より大きかったのは、昼間部で同じ時間を共に過ごした仲間の存在です。昼間部の子どもたちは、一人一人理由は様々ですが、「学校に行かない」という選択をしているという点では共通しています。一人一人が抱える「しんどさ」は、当事者同士だからこそ、多くを語らなくても自然と察し合えるのかもしれません。

そんな仲間たちと何気ない会話を交わし、同じ空間で共に時間を共有することで、息子は素のままの自分を少しずつ自己肯定できるようになっていったんだと思います。

ここにいて大丈夫、できないことがあってもいいんだ、今の自分でもいいんだ……そう感じさせてくれた空間。昼間部の仲間と、ただただ楽しく笑って過ごした時間が、自然と息子の心を癒し、次のステップへ進むエネルギーへと変えてくれたのかもしれません。

また、不登校になるとどうしても自宅に閉じこもりがちになり、日中の活動性が低下していきます。息子も同様、だんだんと起床時間が乱れて昼夜逆転の生活になっていましたが、昼間部に通うことで、朝はきちんと起きる目的ができました。仲間たちとの交流を通してたくさんの刺激を受け、気持ちもリフレッシュして帰って来た日の晩は、自然と心地よい眠りにつくことができ、徐々に生活リズムも改善されていきました。

昨今、不登校の子どもたちの居場所は、フリースクールという形で学校復帰をゴールとするもの、学習サポートを中心とするもの、集団が難しく個別対応するもの等々……様々な形態が存在します。そんな中でエルムの昼間部は、あくまでも集まる子どもたちに合わせて縦横無尽、一つのゴールだけを目的にはしていないように感じます。

息子にとってエルムの昼間部は、「絶対的な安心感」を与えてくれた、そんな貴重な居場所でした。

(2019年 中学3年生保護者)